裁判を起こす
私ごとで恐縮ですが任期延長致しました。
2017-1 の同期の隊員は殆どが帰国し就職活動や神学といった新天地での活躍をされている事と思います。
大嶋は…というと未だに南国Fijiで野球をしています(指導)
本来JICAフィジーオフィスには隊員の任期延長枠はないのですが
今月末から始まっている12歳以下の世界大会(硬式野球)に出場が決まり特例で任期園地長を許して頂きました。
詳しくはそのうち…
no-swing-no-hit.hatenablog.com
前回のBUTAKOに引き続き事件ものをお送りいたします。
フィジーに来て丸2年が経ち活動もいよいよクライマックス、フィジーでの生活も残りわずか(延長とは言え大会終了後には帰国)となった今 野球以外の問題に頭を悩まされています(いました)
最近(というかここ1ヶ月の間に)裁判沙汰に巻き込まれました。
時は遡ること役2年前。
フィジーに赴任し1ヶ月が過ぎた土曜日に傷害事件(未遂)に遭いました。
当時は未だオフィスの鍵を持たされておらず、同僚がくるのを配属先の前で待っていたところをヤク中の現地人に絡まれるという事件でした。
当日たまたま約束の来ない同僚を道端で立って待っている際に、ふらふらと近づいてくる現地人。
まだ英語にも現地語にも自身のない自分は適当にやり過ごそうとするも、彼は執拗に絡もうとしてくる。
明らかに目がおかしい。常軌を逸した表情で僕の持っているバットを指差し何かつぶやいている。
「それをよこせ」と言いたいのがジェスチャーから判断できた。
瞳孔が開ききった状態の目と、涎を半開きになった口から溢すその様は常人のそれとは掛け離れて
見るからに「ヤバイやつ」だった。
こう言った事態に巻き込まれた場合を想定してJICAでも現地でのオリエンテーションでも対応を教え込まれている。
正確な文言は忘れたが「金銭や物を求められたら拒まずに渡し、命や安全を確保せよ。」と言った内容だったと記憶している。
この時私がとった対応は上のものからかけ離れたものだった。
「ヤバイやつ」の求めに対し拒否し抵抗したのだ。
恐怖で声も出せない状態でも「このバットを取られたらオワリ」と言うことがわかったからだ。
野球道具で事件を起こされたら、今後の活動に支障が出るかもしれない。
単純にやられる。バットを取られたら負け。
そう判断し抵抗した挙句、揉み合いになった。
幸い、近くを通りかかったオーストラリア人が助けてくれ事無きを得たが、その事件が私のメンタルに及ぼした影響は小さくなかった。
他人が信じられなくなった、現地人が恐ろしいと思った。
それから一人で歩く時に定期的に後ろを振り返る癖は今でも抜けない
それまで自重のみのトレーニングを行なっていたがジムに通うようになった。
(お陰で5kgほど体重も増えた)
2年が経ち色んな出会いもあり、今では現地人が大好きだが素敵な人だけじゃないと知っている。
そんな事件から2年が経とうとしていた先月
JICAフィジー事務所から「被害届の取り下げ」を提案された。
事務所の意図は以下の通りで私も理解した上で了承した。
①裁判沙汰に対応している時間がない(活動が忙しく割く時間がない)
②このままにしておくと名前が一生残る(未解決事件として書類に残り続ける)
③これまで2年近く何も進展して来なかった裁判関係の事項がうまく進むと思えない
(先延ばしにされるくらいなら終わらした方がいいのでは?)
当時の自分はとっくに犯人に対する負の感情などその他のフィジーに対するイメージもポジティブなものに変わっていたので「被害届の取り下げ」にアグリーし検察省へ赴いた。
検察でこちらの事情(JICAとの契約も終わりかけている事や時間がない事を中心に)伝え、取り下げの手続きに進みたい意向を示した。
ところが相手はそれを望まなかった。
①彼(犯人)は全く反省していない。
②外国人はそうやって帰国してしまうので(うやむやになって)起訴できない
③だから外国人が狙われる(金銭を持っていることもあるが)
以上のことを整然と並べられ「起訴するためにお前の証言が必要」と言われてしまった。
なんか事務所で(一番だが二番だか)偉い人が「法廷に立つべき」と凄まれてしまい単純にびびった。
その日は「考える時間が欲しい」と言うのが精一杯だった。
それから1ヶ月ほど裁判について考えることになった。
①次の仕事との都合がつく場合のみで良い。
②渡航費や移動費、宿泊費その他は全て負担して貰える。
かなり譲歩して頂きもう一度フィジーに戻ってくる決意をし始めていた。
①日本人(を含む外国人)は逃げる(みたいに)言われて悔しかった
②裁判に出て証言してみたかった(好奇心と英語の向上心から)
③旅費を全額出してくれるなら良いか
④まだ次の仕事も決まってないし、それまでなら良いか
⑤裁判で戦うことで他の日本(を含む外国人)の被害を防げるなら…
軽く書いたがそれなりに考えた上で決断した
しかしすぐさま安易な考えはひっくり返される
先日JICA事務所に呼ばれ犯罪担当、法律担当の現地職員も同席のもと話し合いが行われた。
①私が起訴して仮に有罪だったとしても犯人は執行猶予付きで出てくる(軽犯罪だから)
②外国人が法廷に立つのは珍しいからメディアに報道される→日本人(やJICA隊員)のイメージダウン(日本人がフィジー人を牢屋にぶち込んだと言う事実だけを受け取られた場合)
③そもそもJICAとの契約終了後は自分の責任でやり取りをして法廷まで来て全て英語でやり取りをしなければならない。
④いつまで拘束されるか未定(裁判が今年中に行われるかもわからない)
以上のことを含めフィジーでの裁判の仕組みや、フィジー人が受ける印象などを示唆され考えを改めました。
誰のサポートもなく法廷で証言するまでのプロセスを遂行できるのか
いつ終わるかも判らないこの問題と最後まで戦う覚悟が本当にあるのか
この問いに対してYesと言い切ることが出来ない自分が悔しかったです。
結局最後に逃げてしまった自分が情けないです。
ただ、時間を犠牲にして戦ったところで自分の思い描いていた結果が得られない。
自分一人が戦ったところで日本人の犯罪被害が減る数なんて大して変わらない。
となんとなく理解した状態でモチベーションを維持していくことが出来ないと思ってしまった。
そもそも、自分の中では過去の事と許していた問題を検察の偉い人に煽られて熱くなってしまった。
舞い上がって、自分の出来ることを過大評価して一人で騒いでしまった。
結局もう一度検察省に行き「やっぱ法廷には立ちません」という結論に至った。
ここに行き着くまでに1ヶ月以上振り回してしまった担当調整員や事務所の皆様には申し訳ないです(検察の方も)
この結論に至るまでに1ヶ月自分なりに真剣に考えたし、簡単に決めたわけもなく
最後は結局最初に決めた道に戻ることになった訳だけれど、これは現状維持ではなく前に進んだ結果同じ場所に帰って来たのだ
戦う事を一度考えたから学べた事も多くあった
これまでにわかったことは
色んな理由で外国人は犯罪被害に対象として狙われやすい。
裁判はプロセスが複雑で簡単ではない
検察の人はお話がお上手(プロだもん当たり前)
必ずしも被害者の事を思って話しているとは限らない
自分は煽られると戦いたくなる性格
そのくせい自信はない(特に英語)
なんやかんやあったけど今でもフィジーが好き
全額旅費を出してくれる法廷証言ツアーがなくても、またフィジーには遊びにきます必ず。
今回も相変わらず文章が荒れていますが記憶が新しいうちに書き記すために筆を走らせています(もちろん筆じゃない)
本当はもっとお伝えしたいお話があるのですが、自分の備忘録として書かずにはいられない内容だったので書かせて頂きました。
いつかフィジーでの2年間を振り返った時に一つの思い出にするために整理しています。
今は台湾に来て世界大会の真っ最中ですので、この問題はここで完了。
最後に現在参加中の大会のお知らせです。
夏休みの楽しみの一つとしてフィジー野球を応援してやってください。
NO SWING
NO HIT!!!!!!